#03 ボランティアセンターの役割。

『社会福祉協議会』という言葉を聞いたことがあるだろうか。地域の福祉活動を推進する民間団体で、『社協さん』の愛称で親しまれている。 
 
そして今回は、千代田区社会福祉協議会が運営する、『ちよだボランティアセンター(ちよだボラセン)』に伺った。名前の通り、千代田区でのボランティアを個人や団体にコーディネートしたり、学校や企業と連携をしたり、まちに根付いた活動を日々行なっている。 
 
ボランティアという言葉は身近だが、ほんとうに身近な人と、そうでない人の間には、おそらくちょっとした隔たりがある。それは、社会の仕組みがボランティアだけでは成立しないからだ。しかし一方で、ボランティアは社会にとって、絶対に必要な存在でもある。実際、えみふるさんと社協さんは、ボランティアなどを通じて、深い関係を築かれていると取材で知った。 
 
ボランティアが身近になることで、社会に対する捉え方をより広げられるかもしれない。ちよだボランティアセンターの峯真梨子さんにお話を伺いながら、『ちよだボラセン』の役割や、ボランティアと地域について、理解を深めていくきっかけにしよう。 

峯さんにお話を伺ってまず、「そうか!」と気づかされたことがある。それは、ボランティアに取り組むための窓口は、いつでも開かれているということだ。ちよだボラセンには個人の方はもちろん、150もの団体が、登録されている。そのコーディーネートや相談を、峯さんをはじめとする職員のみなさんが担っていて、窓口や電話、メール、ホームページを通じてなど、いろんな内容をまずは相談できるということを教えていただいた。 
 
ただ、ちよだボラセンの場合、千代田区に根ざしたボランティア活動を推進しているため、基本的には千代田区在住、在勤、在学の方を対象としている。しかし、そういう意味でのボランティアに参加できる、できないの話ではなく、「ボランティアに取り組みたい」という条件であれば、さまざまな受け手や、調整をしてくれる場が、世の中にはあるということを、知っているか、知らないかで、自分の一歩が変わっていくように感じた。 
 
そして、ボランティア活動のポイントのひとつは、やりがいだ。たとえば、活動したいという想いとニーズがうまくマッチしなかったり、ボランティア活動がすぐに終わってしまったり、ボランティアをする側と受ける側のバランス関係は、やはり毎回上手くいくわけではないという。 
 
「ボランティアをされる方、受け入れる側の両方にお話を伺い、時には一緒に同行し、活動が始まります。ボランティア活動を継続的につづけられるようにサポートすることも、私たちコーディネーターの役割です」 

さらに、ちよだボラセンは、地域に根ざしたネットワークを活かして、災害への備えや、あたらしいつながりのコミュニティづくりにも、取り組んでいる。 
 
「ちよだモデルネットワーク(災害連携ネットワーク)、略して“CMN”というつながりを立ち上げています。災害時はもちろん、平時からつながり、顔の見える関係づくりを行なっています。区内の施設や病院、企業さんとの関係性を活かして、たとえば『私たちの会社はヘルメットがたくさんあるので、配布できます』など、それぞれの立場でできることを共有しあうことで、お互いにサポートできる関係性を目指しています」 
 
防災や減災、発災後の対策を考える定期的な学習会も開かれていて、千代田区における行動指針『ちよだモデル』も作成中だ。ボランティアの視点は、人の命を守ることにもつながっていくと知った。 
 
「また、プログラム開発という点において、LINEによるつながりの輪を広げる活動をしています。コロナ禍で人と会うことが少なくなり、特に高齢者で認知症やうつ病になってしまう方が増えています。原因を調べてみると、つながる手段を持っていない、つながり方が分からないという課題が見つかり、それを解決するために、LINEでつながるだけでも心が温まるのでは、という発想でした。高齢者や障がいのある方を支えるためにどんなことができるか、という土台づくりも、継続的に考えていきたいと思っています」 
 
ちよだボラセンは、常に顔が見える形で、人と人をつないでいた。経験の長い先輩たちは、一緒にまちに出かけると、いろんな地域の方に声をかけられて「ああ、こんにちは!」と会話がはじまるという。私たちは社会という大きな枠にいながら、ひとりひとり、心を持った人間だ。人とのつながりほど、かけがえのないものはない。社協さんも、はたまた国の福祉も、大前提はひとりひとりの、人間同士のつながりを大切にすることが、根幹にある。そして、ちよだボラセンは、その声を直接聞きながら、今日も人と人とのつながりを、支えているのであった。 
 
最後に峯さんに、仕事のやりがいについてお尋ねした。 
 
「誰かを幸せにしたい、という熱い人を見ると感動します。素晴らしいなあって。一人でも困っている方の生活が楽になったり、笑顔が増えたり、そのお手伝いをすること。そして、人と人のつながりを増やしていくこと。そういった仕事を私もさせてもらえていることが、とても嬉しいことだと思っています」 

2022年2月8日 「#03 ボランティアセンターの役割。」 写真と文章 仁科勝介(かつお) 

TOPへ戻る