#05 えみふる公開講座ボッチャ
昨年の東京2020パラリンピック、ボッチャ日本代表の方々の活躍をすごいなあと思いながら見ていた。だから今回、えみふるで練馬ボッチャクラブの方々を講師に迎えたボッチャ体験講座を、とても楽しみに伺った。
先に感想を言うと、ものすごく面白いし、ものすごく難しかった。家に帰ってトップ選手の試合動画をあらためて見てみると、「うまっ」と思わず声が出た。駆け引きも多く、頭脳戦でもあり、精神面も重要であり、非常に熱いスポーツなのだ。
簡単にルールをまとめると、バドミントン程のコートに白いジャックボールと呼ばれる球を投げ置き、赤と青のボールをいかにジャックボールに近づけるかを競う競技だ。たとえばカーリングは得点の基準になる中心位置が定まっているけれど、ボッチャでは中心の的となるジャックボールを、先攻が投げて自由に決められる。接近勝負、長距離勝負、自分や相手の特徴、点差、試合経過によって戦略が変わる。この駆け引きを考えただけでも、ドキドキワクワクするのが分かるだろうか。
ルール説明のあと、練馬ボッチャクラブの方が審判となって、チーム戦の試合形式でボールを投げていく。
ボッチャはいいなあと思ったことのひとつは、誰でも競技を楽しめることだ。もともとボッチャは、重度の脳性まひを持つ方や同程度の重度障がいが四肢にある方のために、ヨーロッパで考案されたスポーツ。パラリンピックなどの国際大会では、障がいの種類や程度によってクラスが分けられている。だから、選手にはアシスタントがつくこともあるし、ボールをうまく持てない、または離せない選手は、勾配のあるランプという道具を使用したりする。
さらにいいなあと思ったのは、試合が盛り上がるのだ。ナイスショットが出れば「いった〜!」「ナイス〜!」と拍手が自然に生まれる。各チーム6個のボールを使うから、後半になれば一投の重要性が増す。緊迫感のある攻防も、堪らない。参加されているみなさんの瞳の奥が、とにかく生き生きとしていた。パラリンピックで選手が熱い雄叫びをあげていたのを覚えていたけれど、それと変わらない雰囲気が、えみふるにも溢れていたのだった。
途中から、ぼくもゲームに参加させてもらった。人によって、投げる前にボールをぐるぐると丸くこねているのをこっそり偵察していたので、ボッチャクラブの方に理由を聞いてみると、「ボールによって硬さや形が微妙に違うんです」と教えてもらった。「選手は、どのボールをどのタイミングで使うかも、常に考えていますよ」と。なるほど、見ていただけでは分からなかったけれど、プレーしてみると繊細な部分がたくさんある。
「よいしょ!」
いよいよ、魂の一投を放った。白いジャックボールを目指したはずのボールは、かすめることなく無慈悲にも通過していった。悔しい。それに、右と左のコントロールもだが、距離感が難しいのだなあと思った。強すぎず、弱すぎず、思い描いた軌道で投げ切るのは、簡単ではない。
「ちなみに実は、近距離戦の方が難しいですよ。ボールを近づけるだけじゃなくて、ぶつけることも、乗っけることもありますからね」
戦術も多数あるし、投げるときは、一発勝負。「この一投を決めたら」「この一投を決めなければ」というプレッシャーと、選手は毎回戦っているのだなあと実感した。そしてチーム戦が終わって勝利できたときの喜びは、まさにガッツポーズであった。
練馬ボッチャクラブとえみふるは、5年ほど前からのご縁で、ボッチャ講座が行われるようになったそうだ。年齢や障がいの有無を問わず、誰でも熱くなれるボッチャ。気軽でありつつも、技術から戦術まで、奥深さは無限にあるという、ほんとうに素晴らしいスポーツだと思う。もしまたできる機会があれば、是非ナイスショットを放って、ガッツポーズを決めたい。
2022年3月8日 「#05えみふる公開講座「ボッチャ」。」 写真と文章 仁科勝介(かつお)
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