#22 ふれあい福祉まつりへ。

戦時中に手作りされた点字図書

10月に、千代田区役所とかがやきプラザで開かれた、『第20回ふれあい福祉まつり』は、4年ぶりの開催であった。でも、コロナ情勢だけが影響しているならば、3年ぶりの開催のはずだが‥‥と思ったら、4年前は台風で中止になったとのことだった。オリンピックと同じ間隔での開催だ。そして、その久しぶりの開催でお客さんはどうだったのかというと‥‥大盛況であった。千代田区役所1階の特設ステージは始まりから満席で、「ちよだお弁当市」の列もすごい。500円で区内のさまざまなお店からお弁当を選ぶことができるのだが、行列がiPhoneの新発売以上である。「最後尾」のプラカードを持った方は、会場を抜けて、千代田区役所の玄関の外までお客さんを誘導していた。 
 
『ふれあい福祉まつり』とは、千代田区民の方や、区内で働く方、若い学生など、多くの方々が出会いふれあえる場をつくることを目指したおまつりだ。ともに支え合う“ちよだの福祉コミュニティ”を実感してもらうこと。今回のテーマも、以前からのテーマである「つながる心 かがやく千代田」に加えて、「ここから始まるあらたな『ふれあい』」というテーマが誕生した。そして、この場でうまれるふれあいが、確かに溢れていたのだった。 
 
ぼくは今回、えみふるの職員である三井さんと一緒に、自由におまつりを巡らせてもらった。大盛況の雰囲気に加えて、同時に感じたことは、「ボランティアさんがとっても多い」ということであった。今回は120人ほどの、学生さんから社会人まで、さまざまな方々がボランティアで手伝っていらっしゃる。それだけでも、とても素晴らしいつながりだと思った。 
 
さて、それではまずは最初に受付で、取材の腕章を貰おう。と伺ったときだった。 
 
「あれ、峯さんじゃないですか!」 
 
対応してくださった方は、連載の第3回で取材をさせていただいた、千代田区社会福祉協議会の峯真梨子さんであった。確かに、社会福祉協議会さんは今回のおまつりの中枢である。緑色のジャンパーを羽織り、ほかの方もドタバタとお忙しそうに駆け回っていた。ただここでお世話になった方と出会えて、なんだか嬉しかった。そして、これは始まりに過ぎなかったのだ。 

ステージ上では、司会者のアナウンスと同時に、手話通訳と文字通訳があった。そして、手話通訳をしている方に、どこか見覚えがある。‥‥そうだ、山本先生だ! 第15回で取材をさせていただいた、えみふるの上級手話講座で講師をしていらっしゃる、山本実代先生であった。さらに、次のアナウンスで通訳者が変わると、その方も講座での受講生の方だった。そうか、今回のおまつりは、実践の場でもあるんだ。知っている方とこんなに出会うとは思ってもいなかったので、びっくりと感動が重なった。 
 
すると、今度はヘルマンハープちよださんが、ステージに堂々と入場だ。第9回で取材をさせていただいている。あのとき一生懸命に、そして心から楽しそうに弾きながら練習されていたみなさんが、ビシッとな衣装を身にまとい、溢れんばかりの観客の前で、曲を生演奏する。ステージと会場が一体になり、演奏後の会場は大きな拍手に包まれた。素晴らしい時間だった。ぼくも心が嬉しかった。

さらに、かがやきプラザへ移動すると、ボッチャのブースがあった。ボッチャも第5回で取材をさせていただいたけれど‥‥と覗いてみると、やっぱりそうだ。練馬ボッチャクラブの講師の方々である。ご挨拶をすると、思い出してくださった。また、第12回で取材させていただいた、丸の内オフタイム倶楽部の方々のブースもあった。月に一度、どんな方も参加できる、わけへだてのない食事会を開いていらっしゃる倶楽部だ。お話を伺うと、「福祉まつりのおかげで、コロナ情勢になって一度も来れなかった方が、参加してくれたんです。2年半ぶりです」と明るく教えてくださった。すごく嬉しかった。 

と、上の団体さんたちは、ぼくがたまたま以前、取材をさせていただいたことがあるだけで、おまつりにはもっともっと、いろんな団体さんが関わっていた。ステージでは囃子に合わせた町内会さんの獅子舞もあれば、長寿会のみなさんによる民謡やウクレレも披露された。区役所の1階には懐かしい駄菓子屋さんが誕生し、子どもたちが楽しそうに賑わい、別階では編み物やリメイクおもちゃのワークショップも開催された。ほかにも多世代のいろんなブースがあり、実にたくさんの町内会、ボランティア団体、福祉団体、企業が集まっていることを、賑わいの中でとても強く感じた。そして、おまつりに関わっている方々が、おまつりを訪れた方々が、とにかく笑顔で楽しそうなのだ。活気の中に自分がいること。人と人がつながっていること。その明るいエネルギーが、福祉まつりには溢れていた。 

福祉まつりの運営にあたっていた、社会福祉協議会の廣木さんにも、お話を伺った。廣木さんも会場の賑わいを見て、とても嬉しそうであった。 
 
「今回は4年ぶりだったこともあって、もともといくつかあったおまつりが、ひとつにまとまったんです。高齢者の方も、子どもたちも、障がいを持つ方も、お互いに垣根なく交流できる場になればと思っていました」 
 
まさに、その通りの空間ですよね。とぼくは何度も頷く。 
 
「世代を超えて、いろんな方々がいて、いろんな活動をしています。それぞれに役割があって、発表や交流の場があると、嬉しいですよね。生きていくモチベーションになればいいなあと。わたしも今日、すごく楽しいです」

世の中にはいろいろなおまつりがある。「ハレ」と「ケ」のハレがあること。集まること、つながり合うこと、その場の熱気を共有すること。いつもと違う日で、なんだか楽しいぞ。その空間は、同じ場にいる全員のものなのだ。かがやくことは素晴らしいなあ、と幾度となく思った。ぼく自身、福祉まつりに大きなパワーをもらったのであった。

2022年11月22日「#22 ふれあい福祉まつりへ」 写真と文章 仁科勝介(かつお)

取材ご協力 
第20回ふれあい福祉まつり実行委員会

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