#10 スポーツウェルネス吹矢 

えみふるさんで定期的に開催されている、「スポーツウエルネス吹⽮」の活動に参加させてもらった。“⽮を的に放つ”という点では、⼸道やアーチェリーと似ている。しかし、スポーツウエルネス吹⽮は、⼿の⼒を使わずに“⽮を吹く”ことで、障がいを持つ⽅や⾼齢者の⽅でも、気軽に競技を楽しむことができる。  
 
まず、⽮を吹くまでの動作を習った。体を右45度に開き、筒を両⼿で⽔平に持つ。そのまま⽮を筒に⼊れて、筒を真上まで両⼿でゆっくりと持ち上げる。このとき、⿐からゆったりと息を吸うことで、呼吸と⼼を整える。そして今度は両⼿を下ろしながら、吸った息を⼝で吐いていく。このルーティーンをいかに丁寧に落ち着いて、なおかつ同じ動作で⾏えるかどうかが、安定した得点につながると教えてもらった。 

ただ、先⽣に伝えてもらった情報はそれぐらいで、「じゃあやってみましょう」と、早速体験することになった。「始め」と合図のブザーが鳴り、的に⼀礼をして、先ほどのルーティーンをこなす。1本⽬、どれぐらいの⼒で吹けば良いか、どのあたりを狙ったらいいか、全然分からなかったけれど、なんとか当たれ! と思い切り吹いてみたら、3点の的に当たった。気持ちいい! 

的の中⼼は7点で、中⼼から半径3c mずつ離れて、5点、3点、1点と変化する。⼀度に5本の⽮を吹くから、満点35点だ。そして、そのまま数本吹いてみると、「やっぱり最初のルーティーンが⼤事だ」という原点に気づかされた。どこを狙うかよりも、安定したルーティーンと、それによって導かれる⼼の落ち着き、そして、息をしっかり吹くための整った呼吸が必要なのだ。お腹に⼒を⼊れて吹くと⽮が安定しやすかった。 
 
加えて、5本の⽮を吹く時間は、「3分以内」と限られている。しかし、この3分というのが実に短い。こんなに短い時間でカップラーメンができるとは、にわかに信じがたいほどだ。ルーティーンを集中してこなす間、何も考える暇はない。その「無」を⽬指す⼼の状態が、ぼくは好きであった。 
 
1回⽬の点数の合計は35点中、18点だった。悪くは無い数字だけれど、みなさんよりも近い距離というハンデをもらっているから、まだまだ初⼼者だ。先⽣はまさに達⼈レベルで、最も遠い10mの距離から、的の中⼼の7点を連発する。これはぼくからしたら結構、信じられなかった。 

⽚⼿を使って⽮を吹く⽅や、⾞椅⼦の⽅も、どんどんと⾼得点を連発する。すごいなあと思った。体や年齢によって制限されず、されど、体や⼼の調⼦で得点が左右されるスポーツウエルネス吹⽮。いいスポーツだ。 

ぼくは、5本で中⼼の7点に3本、次の5点に2本と、合計31点が最⾼得点だった。もちろん、合計が10点台になったときもあった。⼀応、⼀度試してみようと思って、「的の中⼼に当てたら、ハーゲンダッツ2個買うぞ、集中しろ!」とやってみたが、駄⽬だった。絶対に「無」の状態が⼀番良い。欲を出すと、ダメなのだ。何事も。 

いやあ、⾯⽩かったなあ。みなさんも「今⽇はだめだ! 」「いい⽇も悪い⽇もあるよ」「点数が出るから熱くなれるね」と、それぞれ⼀喜⼀憂楽しまれていた。ぼくも同じ気持ちだ。先⽣は最後に、「体があったまるのも、いいんですよ」と付け加えてくれた。体も⼼も健康になれるのが、スポーツウエルネス吹⽮なのだ。 
 
「ほかの⼈にも、体験してもらいたいですね」 
 
先⽣の⾔葉に、ぼくも連名したい。みなさんも機会があればぜひ、やってみてください。熱くて楽しいスポーツです。 

 2022年5月24日「#10 スポーツウェルネス吹矢」  写真と文章 仁科勝介(かつお) 

取材ご協力 
スポーツウェルネス吹矢サークル「若葉」(活動場所:えみふる)

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